アルザス地方は六角形のフランスの右上に位置していて、そのすぐ右はもうドイツというところだ。この地方が話題になるときはどうしても歴史の話を聞くことが多くなる。
アルザスでいちばん知られている町はストラスブールになるのだろう。木組みの家を見てほかの地方とはすこし違うフランス語を聞くと、急に歴史にくわしくなった気になってしまう。ブーランジュリーに行ってもパンの名前で読めないものもある。
僕はストラスブールに行ったとき時間があったし天気もよかったからドイツとの国境まで歩いた。もうどういう道だったかははっきり覚えていないけど、歩いている人間なんてほとんどいなくて、使っていないような線路や緑だらけの公園を見ながらだった。たまに通る車はトラックかバスが多かった。
フランスとドイツの国境はライン川だったから巨大な橋を渡れば違う国ということがわかった。どこかに国が変わる線でもないのかなと思いながら歩いていたのに、長い橋の上から見えるライン川の素晴らしい景色はそんなことをどうでもよくしてしまった。そんな景色は見たことがなかったからなにとも比べることができなかった。こういうものを伝えたいなら、きっと新しい言葉を探すのがいちばんいい。
橋を渡って初めてのドイツはケールという町だった。のんびりとした雰囲気で町並はストラスブールと似ていた。でも店にはなにが書いてあるのかよくわからなかったし当たり前だけど郵便局も全然違った。言葉が読めないと店の外に置いてあるバナナやトマトもなにかすこし違うものに見えてしまう。僕はフランスフランしか持っていなかった。
ストラスブールでは、教科書どおりかもしれないけどやっぱりシュークルートを食べた。歩いてお腹がすいていたのに全部食べられなかった。1杯だけ飲んだリースリングがおいしかった。たくさんワインの本や雑誌を読んでいたけどそれでは味わえない気持ちだった。こういうようにワインを楽しめたらきっといい。こういうために勉強をしたくなれるのかもしれない。それはワインとか歴史のこととか。