パトリシア・カースの新しいアルバムを買って聴いてみた。タイトルは「sexe fort」。イメージだけなら、辞書に彼女の名前が載っているなら同義語として書いてありそうな言葉だ。ジャン=ジャック・ゴールドマンやフランシス・カブレル、パトリック・フィオリなどが曲を提供している。
ゴールドマンの2曲はすぐにわかった。数年前に出たゴールドマンの「chansons pour les pieds」は、こんなアルバムも作ってみたかったんだよという穏やかな感じのものだった。彼のファンみんなが気に入ることのできる作品ではなかったかもしれないけど、「sexe fort」のなかではその優しい雰囲気が逆にアクセントになっている。これまでゴールドマンがカースに提供した曲は心に残るものが多い。ひとつの国で地平線で国境で地域で言語で歴史。カースの歌声は独特なものだけど、ゴールドマンはカースにしか歌えないような曲を作ってきた。日本で聴けるフランスの音楽はかなり偏っているけど、もうすこし違う機会があってもきっと嫌みじゃない。エディット・ピアフだって亡くなってから去年で40年になった。
僕は店のBGMはフランスのラジオを流している。住んでいたニースは小さな町ではないけど、東京と比べたらできることが少なかった。24時間何でも見たり買ったりなんてできない。でもそういう町が僕にたくさんの時間をくれた。マルシェやスーパーに何時間もいたときもあったし景色を見て半日くらい終わってしまった日もあった。
東京に帰ったらどうしようなんて考えながら家にいる時間も長かった。そんなときにいつもラジオを聴いていた。考えることとラジオを聴くことくらいしかやることがないときもあった。どんどん距離が近くなって知らないうちに生活のなかのひとつになっていた。毎日いろんな野菜や果物や肉やチーズがあった。食べることもそれとほとんど同じだった。