時間の長さや感覚はきっとひとそれぞれに別のものがある。時計は本当に歪んでいるくらいでちょうどいいんじゃないかと思うときもある。違ったほうが不公平にならないことだってある。
何年か前は僕は深夜に働いているときも多かった。夕方から朝まで通しの仕事もあれば、仮眠時間の取れる現場もあった。僕はあまり飛行機に乗ったことはないけど、時差ぼけになる自分なんて想像できない。そうでないひとからしたら想像できないのは夜中に働くことなのかな。
築地市場の場内に初めて入ったのは今から3年前くらいになる。その日のことははっきりと覚えている。四丁目の交差点から発泡スチロールが積み上がっている入り口までがずいぶん長く感じた。場内でも距離感が全然ない。メトロに初めて乗ったときのように誰からもじろじろと見られているような気がした。観光客はどの場所でもわかりやすい。
あれからずいぶん通って今では楽に買い物ができるようになった。時間もかからなくなったし、伝票を見るとだんだん安くなっているものも多い。場内の値付けは仕入れ価格や品質だけで決まると決まっているわけではない。
フランスにいるときは僕は毎日でもマルシェに行きたかった。今も行きたい。そんな自分が築地には休みの日には行こうとは思わないし、普段行ってもあまり長居をすることもない。友達やお客さんとそういう話題になっても実際に行ったことがない。
町にあるマルシェと同じにならないのはわかるけど、そんなに離れなくてもいい。築地の場内には毎日たくさんの外国人の観光客がいる。狭い通路を何人かでかたまってゆっくりと歩いていたり、大きなカメラやリュックサックを身に付けている姿を見るとやっぱり違和感を感じることはある。でもそれを邪魔とか迷惑と思うようになったらおかしい。来るか来ないかしかないのに。東京の数少ない観光地なのだからもうすこしサービスを見せてもいい。無理な愛想や会話がなくてもサービスがあるならそれにお金を払っていくひとは必ずいる。
場内でターレーに轢かれたらたぶん轢かれたほうが悪くなる。築地の場内は治外法権なのかもしれない。でもそう言えるのはそれ以外の外の世界があるから。僕が買っている魚は僕が自分で食べるためのものではない。本当は市場はもっと楽しい。違ういい感覚を持って魅せてくれたらいい。